ゲーム・オブ・スローンズ旅のしおり

地図と写真でゲーム・オブ・スローンズの世界とあらすじを解説します(ネタバレあり)

ジョン・アリン殺害事件

ゲーム・オブ・スローンズのシーズン1最初のエピソードですでに亡くなっている先代王の手、ジョン・アリン。彼の死にまつわる長くそしてミステリアスな物語を解説します。

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ジョン・アリンという人物

ジョン・アリンは代々アイリー城を治めるアリン家の当主でした。妻は年の離れたライサ・アリン(キャトリンの妹)。彼女との間に幼い息子ロビンがいます。

ロバート王とネッド(エダード・スターク)は幼いころジョン・アリンの元に預けられ兄弟のように一緒に育ちました。二人にとっては後見人、父親のような存在です。

ドラマが始まる約17年前、反乱を起こして王位を手にしたロバートはジョン・アリンを王の手に任命します。以後17年間、政治に全く関わろうとしないロバートに代わって七王国の政務を行っていました。

 

ジョン・アリンの死とその影響

ゲーム・オブ・スローンズの物語は、ジョン・アリンが急な病で亡くなり、次の王の手としてネッドが指名されるところから始まります。

S1E1 冬の訪れではロバートが家族を連れてウィンターフェルを訪れ、ネッドに王の手になることを要請します。その晩、アイリー城に住むライサからキャトリン宛に「夫ジョン・アリンの死はラニスター家による毒殺」という手紙が届きます(1)。そしてサーセイとジェイミーの逢瀬を目撃してしまったブランはジェイミーに塔から突き落とされます(2)。

S1E2 キングズロードでは王の手を引き受けたネッドがロバートと共にキングズ・ランディングに旅立ちます。一方ウィンターフェルでは塔からの落下で下半身不随となったブランを殺そうと刺客が侵入し、キャトリンとダイアウルフのサマーによって阻止されます(3)。暗殺者の武器が庶民には手に入らないヴァリリア鋼の短剣だっとこと、そしてライサの手紙から、キャトリンはラニスター家の関与を疑い、ネッドを追ってキングズ・ランディングに向かいます。

S1E3 スノウ卿ではキングズ・ランディングに着いたキャトリンが情報を収集します。リトルフィンガーは、(3)の事件で使われた短剣がもとは自分の物であり、賭けの代で今はティリオンが持ち主であると言います(4)。

S1E4 不自由、庶子、破たんではネッドがジョン・アリンの死について追及を始めます。ネッドはグランドメイスター・パイセルの元を訪れ、ジョン・アリンが死の直前に名家の身体的特徴を書いた本を読み、「種は強い」と言っていたと聞きます(5)。リトルフィンガーからは、ジョン・アリンの死の直後に元従者のヒューが騎士に任じられたこと(6)、また町の武具店に頻繁に通っていたことを聞きます。ネッドは武具店を訪れ、そこで働いている青年ジェンドリーがロバートの落とし子であり黒髪の持ち主であることに気付きます(7)。ジョン・アリンの元従者ヒューは馬上試合でラニスターの騎士マウンテンと対戦し命を落とします(8)。ウィンターフェルに戻る途中のキャトリンは偶然キングズ・ランディングに戻るティリオンに出会い、独断で彼を拘束します(9)。

S1E5 狼と獅子ではヴァリスがネッドの元を訪れ、ジョン・アリンの死因がライスの涙という毒薬で、ヒューが盛ったと推測します(10)。ネッドが娼館を訪れ、ロバートの落とし子と言われる赤ん坊が黒髪であることを確認します(11)。ジェイミーがティリオン拘束の報復でスターク家を襲います(12)。

S1E6 金の王冠ではネッドがこれまでの情報を元に、ジョフリー含むロバートの3人の子がロバートの実子ではないことを確信します(13)。

S1E7 勝つか死ぬかでは拘束されたティリオンの救出のため、タイウィンがジェイミーに兵を与えます(14)。ネッドはサーセイにジェイミーとの関係を問い、サーセイは王子たちの父がジェイミーであると明かします(15)。ロバート王が死に、サーセイは息子のジョフリーを即位させます。ネッドはロバートの遺言に従い抗議しますが牢に入れられてしまいます。

シーズン1の序盤は、ジョン・アリンが毒殺された事件と、ブランが襲われた事件について並行して物語が進みます。

  1. ジョン・アリンの死はラニスターの毒殺という手紙をライサから受け取る。
  2. ブランがジェイミーに塔から突き落とされる。
  3. ブランが暗殺者に襲われる。
  4. 暗殺者の短剣がリトルフィンガーからティリオンに渡ったものとリトルフィンガーに聞く。
  5. ジョン・アリンは死の直前に「種は強い」と言っていた。
  6. ジョン・アリンの死後、従者のヒューが騎士になる。
  7. ロバートの落とし子ジェンドリーは黒髪。
  8. ヒューがマウンテンと戦い命を落とす。
  9. キャトリンがティリオンを拘束する。
  10. ヒューがジョン・アリンに毒を盛ったとヴァリスが推測する。
  11. ロバートの落とし子の赤ん坊は黒髪。
  12. ジェイミーがネッドとスターク家の家来を襲う。
  13. ロバートと子供たちに血のつながりはないとネッドが気づく。
  14. タイウィンがジェイミーに兵を与える。
  15. サーセイは子供たちがジェイミーの子であると認める。

ネッドは次のように推理します。ジョン・アリンはサーセイの子供たちの父親について疑いを持って嗅ぎまわっていた。それに危機感を感じたラニスター家はジョン・アリンの従者ヒューを買収し毒を盛らせた。ヒューは出世して騎士になり高価な鎧を与えられる。鎧を贈ったのは金持ちで有名なラニスター家だろう。しかし口封じのためラニスターの騎士マウンテンによりヒューは殺された。

 

ドラマを見ていると、ラニスター家は不正を行い、策略をめぐらせて他の家を蹴落とすワルい家族という印象を持ったと思います。2つの物語はスターク家とラニスター家の対立という形でつながり、やがて凄惨な結末を迎えます。ジョン・アリンの事件は以後のエピソードで触れられることはなく、解決したと思われていました。

一つの嘘

動きがあったのはS4E5 新王誕生です。キャトリンの妹でジョン・アリンの妻であったライサ・アリンが、愛するリトルフィンガーに次のように語ります。「言われた通り、ジョンのワインに薬を入れた」と。これはすなわち、ライサからキャトリンに送られた「ジョン・アリンの死はラニスターの毒殺」という手紙が全くの嘘だったことになります。もしこの手紙がなかったらジョン・アリンの死は病気によるものされ、ネッドがキングズ・ランディングで真相を究明することもなかったでしょう。

もう一つの嘘

S7E4 戦利品では、リトルフィンガーからブランにヴァリリア鋼の短剣が贈られます。これはかつてブランを襲った刺客が持っていたものですが、なぜリトルフィンガーが持っているのでしょう?所有者がティリオンなら、貴重なヴァリリア鋼の剣ですからアイリー城から解放された後に取り戻しに来てもおかしくありません。答えは簡単。短剣の持ち主はリトルフィンガーで、ティリオンに渡したという発言が嘘なのです。

2つの嘘をふまえて考えると、ネッドがジョン・アリンの死を追及することはなく、キャトリンがティリオンを拘束する理由もなくなるため、スターク家とラニスター家の関係を悪化させる出来事はほとんど避けることができるものです。

  1. ジョン・アリンの死はラニスターの毒殺という手紙をライサから受け取る。→嘘
  2. ブランがジェイミーに塔から突き落とされる。
  3. ブランが暗殺者に襲われる。
  4. 暗殺者の短剣がリトルフィンガーからティリオンに渡ったものとリトルフィンガーに聞く。→嘘
  5. ジョン・アリンは死の直前に「種は強い」と言っていた。
  6. ジョン・アリンの死後、従者のヒューが騎士になる。
  7. ロバートの落とし子ジェンドリーは黒髪。
  8. ヒューがマウンテンと戦い命を落とす。
  9. キャトリンがティリオンを拘束する。
  10. ヒューがジョン・アリンに毒を盛ったとヴァリスが推測する。
  11. ロバートの落とし子の赤ん坊は黒髪。
  12. ジェイミーがネッドとスターク家の家来を襲う。
  13. ロバートと子供たちに血のつながりはないとネッドが気づく。
  14. タイウィンがジェイミーに兵を与える。
  15. サーセイは子供たちがジェイミーの子であると認める。

黒幕は?

ライサにジョン・アリン殺害をそそのかし、キャトリンに嘘の手紙を送らせ、ブラン暗殺未遂にラニスター家が関わっていると思わせる嘘をついた黒幕。それはリトルフィンガーです。リトルフィンガーはネッドにヒューやジェンドリーの情報を与えてサーセイの秘密を探る手助けもしています。スターク家とラニスター家の関係が悪化するようにネッドを誘導しています。

リトルフィンガーの動機についてはS1E7 勝つか死ぬか、そしてS3E6 登壁から伺うことができます。リトルフィンガーにはネッドのような武勇もタイウィンのような財力もありません。しかし彼は情報を操ることで混乱を生み出し、その中を這い上がって生きて来ました。彼の人生は梯子を登ること。そして登り切ったところには鉄の玉座があるのでしょう。

S7E7 竜と狼で、リトルフィンガーはスターク家の子供たちに過去の罪を暴かれ処刑されました。